電脳による衝撃波

バトーから引用されるバセットハウンド

先週の土曜(11/05)、民放で『スィングガールズ』が放送するということで、まだ観たことないし、観てみようかな、とテレビの前に座るとたまたま同じ時刻に放送していたNHKスペシャル「サイボーグ技術が人類を変える」の方を先に見入ってしまった。


とにかく私にとってそこで流れた情報はかなり強烈で衝撃を受けた。一方で東浩紀動物化するポストモダン』の”データベース”的な概念がかなりリアルに接近してきたような気がし、ほれみたことか、というような(自分の手柄では決してないが)思いで興奮し、畳をたたきながら観ていたわけなのだ。
まだ観てない人や、観て関心をもった人に参考になるHPがこちら↓

http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/sci/

番組の解説付きのリンク集だ。
また、NHKスペシャルの放送記録

NHKスペシャル

も番組の概要が簡単にまとめられている。


番組の章立てを紹介すると


1章 脳の信号を利用するサイボーグ技術
2章 脳は機械に合わせて進化する
3章 脳が機械で調整される
4章 脳が全ての機械と直結した


という、10年前ならSF小説か何かで一般には一笑にふされかねない何かぎょっとする単文が並べられているが、今の時代では等身大な意味をもつ言葉なのだ。


この番組はサイボーグ技術の行方を追って、立花隆が世界各地を取材するといった設定になっているのだが、そこで取材された技術の中で特に印象深かったのは、カナダに住む”義眼”の男性の取材記録である。

仕事中に視力を失った彼は、脳に埋め込まれた差し込み口にチューブのような管をはめ、眼鏡についたカメラに映された画像の電気信号をチューブをを通して脳に送り込むやり方でものをみる。脳で認識されるその映像は、モノトーンのグラデーションからなる大きなドッド絵のようなものだ。彼は手術直後、100個の光をみることが出来たが、この技術の発明者が死亡し、機械の老朽化が進んだことで今は6個の光しかみえないとのこと。(というか、この技術の発明者の研究の跡を継ぐ人はいなかったのであろうか。よっぽどの天才で誰もついてこないかつかせない、ぶっちぎりステージだったのだろうか。)

この義眼の男性が外の風景をみて言った言葉が凄い。
『光の点が見えてきました。木が見えます。枝が揺れるたびに光が走るからです。』
また、6個の光がみえることに意味がありますか?という立花の質問に男性は
『あります。たった1つの光が見えるだけでも、私にとってそれは完全な暗闇ではないからです。』
と答える。
これらを聞いたとき、あなたはゴダールですか?と思わず声にだして突っ込みをいれてしまわずにはいられなかったが、この場面が凄いところは、今までスクリーンの光を目前にしてはじめてはかれてきたこのような台詞を、この義眼の男性は自分の脳内でもって実感し、もらしていることだ。
スクリーンで展開する映像の世界と脳の中で”認識”された映像の世界、何をもって現実の世界とみなすのか、認識の意味の曖昧さに立ち止まらざるをえない場面だった。


”バトー”がやってきた.....
というわけでこの番組に大きくショックを受けた私は今更ながら押井守監督の『GHOST IN THE SHELL攻殻機動隊−』と『イノセンス』をTUTAYAで借りて観、その電脳やらサイボーグやらの世界に熱くなるのだが、その話はまたのちほど。