『河内山宗俊』という名の男

河内山宗俊 [DVD]

居酒屋のおかみの夫、河内山宗俊と用心棒の金子市之丞が、(幼なじみだった吉原の娘と心中を試みるが一人生き残ってしまった弟の賠償のため)身売りを決心する甘酒屋の娘を助けるべく奮闘するお話。

16歳の原節子がみれる。

私にとってはただそれだけでも観る価値があるこの映画。
この人がスクリーンに出るだけで、かつての刷り込み的映画経験によって条件反射的な喜悦感が沸き起こってしまう。


それにしても山中貞雄という監督は情景描写が絶妙だ。

花魁宿のやからが原節子のもとに三百両を出すか身売りするかと脅しにきたシーンでは外に紙吹雪(にみえる)の雪を降らせたショットや、「人間らしくなった気がする」というようなことを語る金子のくわえていた楊枝のドアップショットなど、映像で語らせる術を知ってる表現をするのだ。最後の家と家の狭間の水路での乱闘シーンもさすがなのだ。誰が逃げる逃がす、敵を塞ぐ塞がないのやりとり、次々とスクリーンに流れ込んでくる人の流れ、水しぶきをあげ姿をくらまし、小さな橋を渡り別の区域へ移行し....といのを路地のようなその狭く深度の深い水路でくり広げられる。


う、うますぎる、格好いい。


ちなみに『人情紙風船』にも出ていた中村翫右衛門という人、印象的な俳優だ。歌舞伎の人らしい。