「人情紙風船」が山中貞雄の遺作ではチトサビシイ。

人情紙風船 [DVD]


「人情紙風船」が山中貞雄の遺作ではチトサビシイ。
 負け惜しみに非ず。
山中貞雄 陣中日誌(遺稿)より抜粋


この映画の公開した1937年、山中貞雄は中国へ出征し、38年7月、河南省で急性腸炎に罹り、9月17日死去。享年29歳。

首吊りのエピソードからはじまるこの映画の舞台装置、長屋。
浪人になりさがる海野又十郎の妻が紙風船作りの内職をする部屋の隣には、気風がいい髪結の新三が住んでいる。


金魚売りやひょっとこや、通夜の宴会や縁日など、監督のユーモアセンスの光るカーニバル、そのような交錯点が溢れる情景の最大の山場は、なんといっても毛利に断絶を受け絶望する又十郎と、復讐するべく白子屋の娘を誘拐する新三の物語が勃発する縁日後の雨のシーンに違いない。


ラスト、祝いの酒盛り後、又十郎と新三の落下する運命を見届けると、道の脇の水路に転がる紙風船の流され、小さくなっていく情景とともにスクリーンはフェイドアウト


無情紙風船、チトサビシイ...