太陽は左翼ひとり、すぱぱぱーん!vol.2

nekowani2005-02-27

『LEFT ALONE2』上映初日の終演後に井土紀州監督、スガ秀実花咲政之輔がやってきた。時刻は23:10ほど。ユーロスペース管理人は慌しく彼らを舞台にあげ、あからさまな時間的プレッシャーをあたえている様子。もちろん横の対談をする余裕はない。その中でスガ秀実は終始デブネタ。ネタの対象として着火された花咲はそれを受けるでもなく鎮火し、見てる観客はハラハラもしくはシラジラとした雰囲気の中、予定外のゲスト登場、出演者の鎌田哲哉プラスである。さて、ここで言うプラスとはなにか。それは彼がその日引っ提げてきた『重力03』なるもので、『LEFT ALONE』に関するブックレットだ。原田大二郎風なセーターを着こんでやってきた彼は、駆け込み寺的な切迫感をみなぎらせ舞台に上がり、ぎりぎり完成させたというそのブックレットの紹介する中、巻末に載せる予定の重力 - ハイブリッド・マガジンのHPアドレスを、http://www.q-project.org/q_kyoto.htmlのアドレスと間違えて記載してしまい、修正シールを貼ろうかとも思ったが(彼が深夜の密室で黙々と一冊一冊に訂正シールを貼る姿が怖いほどはまっているため、痛々しい気分にかられる)それはやめたと語る。なぜならそういった修正は第二のトロツキーを生み出すことになる(『LEFT ALONE』冒頭のレーニン演説捏造写真にかけている)ため、今回あえて間違いのままブックレットを提出するのだと言うのだった。ブックレットにざっと目を通した後、その時の事を振り返ると、それはさながらブックレットの中の彼のエクリチュールの相似形のごとく、まことに注釈的な舞台挨拶であったな、と思える。

それまで鎌田をほぼ知らなかった私は、今回刊行されたブックレットを、単に『レフトアローン』の解説書的なものだとばかり思っていたので、中身を読んで仰天した。それは穏和な解説書などではなく、むしろ不穏な激しい柄谷批判(他)であったからだ。
書籍版『LEFT ALONE』(明石書店、2005年)に向けた鎌田の原稿が、NUMやq-projectを巡る柄谷批判をしたものであったため、柄谷からの圧力もあり掲載にいたらず、同じく書籍に掲載されなかった映画の中のスガと鎌田との対談(柄谷批判をした原稿掲載を拒否された鎌田が対抗して、掲載することを拒んだもの)をあわせて、今回この『重力03』に掲載している。
読後感は… 確かに言いたいことは分かる、が、あまりにも念がこもりすぎた言表であるため、非常に扱いに困る、といったものだった。これを「禍(まが)」と呼ぶ友人もいたが、私の脳裏には「呪怨」という文字が鮮明に浮上した。友人から借りて読んだので現在それが手元になく、引用できないのが残念なほど、壮絶な罵倒(柄谷に対してだけでなく)が繰り広げられており(特に注釈における彼の饒舌が凄いのであるが)、圧巻された。そしてこれもまた友人も言っていたことであるが、舞台挨拶で解説された鎌田の失錯(q-projectと重力のHPアドレスを入れ違いに掲載)が、「NAM途中退場者」の肩書きのもと、NAMに対する批判を繰り返す彼にとってあまりにも象徴的な失錯であるのがまた、このブックレットの神経症的イメージを助長させるのだった。

NAMにしろ柄谷批判にしろ、詳しい文脈は知らないが、『重力03』は良しも悪しくも強烈な印象を受けた本である。おそらくユーロスペース以外では手にいれられない代物だろうと思われるので、この映画を観に行く人は一度手にしてみるのもいいかもしれないが…

*訂正

・『重力03』→『ブックレット重力NO.1「LEFTALONE 構想と批判」』

・「NAM途中退場者」→「レフトアローン途中退場者」