ジャンプ!ジャンプ!

ABC戦争―plus 2 stories (新潮文庫)何だが賞味期限を一週間も過ぎた危険なステーキ用牛肉200グラムあったのを(冷凍しているので一週間程度なら一向にきにしないのだが、生で輸送されてきたので鮮度が心配だった。ヤコブ病についてはたいした知識もないのでナメテかかっているのだが)、今日こそはと思って比較的一番食欲のある休日の朝食に焼いた。
しかし一般的な朝食にふさわしくないその量に圧倒され、肉以外のものは一切腹にはいれられぬ、もしいれたとしたらステーキの方を残し、せっかくの高級食材を今度こそ無駄に捨てることになるだろう、ということで、結局肉:主食(白米)=9:1という割合で食することになった。
朝から圧倒的な肉の量を腹におさめ、やや獰猛な気分にもなった私は、とりあえずおちゃめなストロベリーチョコレイト一粒で締めくくることで気分の軟化をはかる、というのがこの休日の始まりだ。

昔から消化吸収のよくない私は、最近は納豆ばかり食べている軟弱な胃袋をフル回転させていることを自覚しながら、ひとまずは阿部和重ウィーク最終章になるだろう『ABC戦争新潮文庫の読破にかかる。
『ヴェロニカ・ハートの幻影』から読む私は、洗濯ものも同時進行していたのだが、ものを干している間うっかり『ギザギザハートの子守唄』を歌ってしまったがためにそのイメージがその後もこの作品から離れないものにしてしまった。
おまけに腹を肉ばかりで満たしたばかりの自分と犬のエドさえも重ねてしまいながら、読書とはそんな風に個々に垢をつけてゆくヴァイタリティあふれた現象なのだと勝手な解釈も加えてみるのだった。

時刻はそのままお昼をまわり『公爵夫人邸の午後のパーティー』へと進む。
舞台の照明は点いたり消えたり、まさに映画のフェイドイン・フェイドアウトに遭遇したかのような事態におちいるのでおろおろしているうちに、シーンはたくみにモンタージュされ、ジャンプするコマ同士のメトニミー的連鎖によって「月にかわっておしおき」するセーラームーンはいつのまにか強盗と化し、ニセ女子高生がいつまにか生女子高生にすり替えられてしまい、そう思ったら両者は車とオートバイの衝突死という結合によって終結してしまうのでびっくりしてしまう。

圧巻するまま一気に『ABC戦争』へと思いきや、O市がO町が、O山が、などどいう丸い空白ばかりの列挙に出会い、なんだかそのまま丸い穴の睡魔に吸い込まれるように寝てしまう私は、インターバルを経ることとなる。
ちょっとしたフェイドアウトを越えて復帰すると、そのまま機械整備員によって描かれる放物線の滞空に身をまかせた。
そしてハンダ的役割をもつ種田秀史郎のO山での死によって○く収まることで私もようやく着地すると、胃もたれもすっかり忘れてそのみごとな円舞に感心していた。
そのころには急激な肉食化によってもたれた胃袋も新しく更新されており、やっぱり私の胃袋は納豆向きだったのだなぁと、確認したのだった。