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アウラ

今日1ヶ月以上ぶりにVIDEO NEWS - ニュース専門ネット局 ビデオニュース・ドットコムをみた。
テレビでニュースをみていると”こんなときマル激オンデマンドならなんと語られるだろう”という風にしょっちゅう頭をよぎり、最近は選挙もあったので特にチェックするべきだとは思っていたのだが、脅迫的に何かに追われていたのでどうしてもみる余裕がなかった。(自分のブログの存在さえわずらわしく感じられ、封印されていた。)

ということで久しぶりの工学かがった人文のシステマチックな会話の刺激的な風を受けたわけである。

私のみたエントリーは民主党の前原さんがゲストの回と、斎藤環さんがゲストの”神保さんでもわかるオタク入門”だ。私としてはまっさきに斎藤環の回をみたかったのだが、好きな物ほど後まわしにし、自分自身をじらすというマゾ根性でまずは前原さんの回からみる。



前原さんの回というのも充分興味深いものだった。
印象的な論点は『民主党のイメージ戦略』についてである。
”男気をみせる”安い演出、ナチ的な強権な演出、さまざまあるが、民主党はコストはかかる(つまり直接的な効果を期待するのでなく、めぐりめぐってやってくるような、間接的な効果を期待する)演出(活動)をしたらどうなのかという宮台真司の意見。具体的には国民(特に都会の若い無党派層など)に、そもそも”幸福とは何か””自分とは誰か””政治とは何か”というような問いかけをし、民度を高めてゆくところからはじめる活動のあり方だ。
これは確かに”男気戦略”というようなハデでマッチョな安易な演出より、地道で労力のいる活動だが、有益ではあるだろう。
宮台さんが更に加えるには、前原さんは若いし、(ひらたく言えば)庶民出身の人なので都会の若い無党派層などのロールモデルになりやすいお得な立場なのだからそこは是非活用すべきだということ。

前原さんは代表といえども聞く姿勢を持っていた(ところどころの過剰な受容が鼻についたが)ので面白い対談であった。党首にしては少し宮台さんにリードされすぎかな、とも思ったが、会話の余地があるだけ今後の前原さんに可能性があるだろうか。



後編の高野さんのマル激は(申し訳ないが)足早に飛ばし、斎藤環のオタク入門へ。
この会のマル激は”5金”と呼ばれるスペシャル版の無料配信なので、ビデオニュースドットコムに入会してない方もみていただけると思う。
まずこの回は内容云々の前にその場の絵で楽しませてくれる。何せコミケ東浩紀斎藤環が遭遇するは、ワンダーフェスティバルで宮台さんがフィギュア片手にオタクに乗り気でない神保さんに懸命に解説するは、3人(宮台、神保、斎藤)がおにぎりむしりながら休憩時間もオタクについて語っているは、いつもならみる事のできない場面が満載だったからだ。

宮台さんはオタク論で有名な東浩紀の”データベース”の話をだしつつ、オタクの文化が情報をうまくひきだすフックとして機能を果たしていると語る。
加えて、なぜ彼らの文化が二次創作物なのかについてはベンヤミンアウラの引用を最初に出し、現実と虚構の分かりやすい対立で解説する。

宮台さんははオタクとは物を消費するのでなく、虚構を享受しているのだと説明。
彼の言う”現実はつまらない、くだらない、虚構の方がよっぽど豊かな経験が得られるんだ”というオタク像とは、現実から疎外されたからオタクにならざるをえなかった”ネガティブ”存在ではなく、はたまた、現実と虚構の境目を見失った存在でもない。彼らは現実と虚構のレイヤー分けができる上で、敢えて虚構を選ぶポジティブなオタク像なのだ。
ポジティブな意味のオタクとは、同じく宮台氏が見田宗介の『現代社会の理論』の中の”IT革命が大量消費社会の未来を明るくするだろう”という部分を例にあげ、説明するように、物の消費でなく情報の操作、享受によって存在する人たちのことである。つまりオタクは無数にある情報をデータベース化し、その組み合わせやチューンナップをしてで楽しむの人々なのだ。彼らは物を消費せずとも豊かで充実した経験を味わう。

私がオタクのあり方に大きく共感する部分はまさにここである。
ただし、自分がオタクであるという自信はない。
なぜならオタク論がセクシャルな話題になった時、精神科医斎藤環がいつも説明してくれる”萌え”の要素が欠けているからだ。私はややフェティッシュな傾向をもった本や映画やPC好きではあるし、斜視がちなひねくれものだが、自分の趣味に性的な衝動は自覚していない。そしてコミケ系の漫画を読みたいと思える自信はない。私の趣味は60年代風の古いタイプのものでまだとどまっており、何世代かずれているような気がする分、気後れさえ感じるのだ。ただそこがまた世界にひきこもる要因にもなるのだが。

ところで宮台さんが、前回の民主党の前原さんに語った”若い無党派層を獲得すれば”という発言を発展させ、『オタクのための民主党』というようなうまいことを言っており、少し感動した。今の民主党の中身は分からないが、オタク層と対話でき、信頼を得ることができる政党になったら、これは面白くなるはず。