アッパレヤニッポン

ニッポニアニッポン (新潮文庫) 私を巡る数少ない友人等が薦める阿部和重の『ニッポニアニッポン』を読んだ。芥川賞をとったばかりでもある彼の作品を「今」読み語ることは少々気がひけるが(というか、あまりにも安易に話題に便乗するミーハーっぷりを暴露している居心地の悪さ)、それでも構わず何か言いたくなる程の読量感である。
 これは鴇の交配を軸に、中国と日本の交配、三島由紀夫の『金閣寺』と大江健三郎の『セブンティーン』の交配(と簡単に言ってしまうのは、阿部和重がこの作品に対してそういった解釈をしていたと斎藤環があとがきで言ってたから。でもそう指摘されずとも、読んでいる間中、私の中で上にあげたニ点と村上春樹を合わせて三点がくるくるまわっていたよ!)などを無邪気に展開し、身も蓋もなくあらわになったと同時に、象徴の不在を暴露するホラー小説である。読んでいる間の私の不気味さは『時計仕掛けのオレンジ』のアレックスのパァーティにも勝るに劣らなかった!ここまで見事にあざとくやられたら、「ウラー!」と叫んで(『白痴』ですから)万歳するしかないかな、と思っている。